思春期2.0

康夫は派遣社員。派遣先の仕事は、Webデザインと言えば聞こえはいいが、上からの指示通りタグを打つだけの仕事。都内の大学を出た後、地元である九州の役場に勤めるための試験を受けたが、ろくに勉強もしていないので落ちてしまった。
再試験のための勉強もほどほどに「クリエイティブ」な就職先を探すと称して上京した。
特段有名な大学を出ている訳でも、有益な資格がある訳でもなく、仕事に意欲的に取組むようには見えない康夫にとって、就職戦線は厳しく、派遣社員として生活費を工面するより他なかった。
上京して四年、派遣先は半年に一回は代わった。スキルアップしようにも派遣先の仕事は基本的に雑用。各種専門学校に通う余裕は当然ない。派遣のままでは履歴書に書くにも職歴としては認められにくく、多少景気が上向いたとはいえ、安定した身分を手に入れるのは依然厳しい状態にあった。それどころか、むしろこのまま時間をかければかけるほど厳しくなる。ネガティブな意味を伴ってマスメディアで使われる「氷河期世代」「ワーキングプア」etc.これらの言葉が今の自分を如実に表していることを康夫は自覚していた。
どう足掻こうとも抜け出せぬ不安定な生活。不安定とはいうが、皮肉にも確実に悪くなって行く自身の将来。
ただ擦切れながら生きていく生活の中で、彼が心の支えにしているものが一つだけある。プロレタリア革命である。