僕らの存在がこんなにも単純だと笑いに来たんだ  1

(前回から続き)
テルオはこの不条理な光景を前に最初こそ狼狽するのみだが、深く深呼吸をし落ち着きを取り戻すよう努めた。二回ほど深呼吸した時テルオの中に新たな感情が芽生えてきた。
「うまそうだ・・・」
なぜこんなことを考え付いたのか。当の本人ですら良く分かっていない。「あまりの混乱におかしくなったのか?」目の前の腕に対して常軌を逸した欲求を抱く自分を冷静に自答する自我を残しながらもその欲求はテルオには抑えることが出来なかった。ベッドの上にのり腕のにおいを嗅いだ。腕が生えている部分から手の部分まで匂いをかぎながら顔を移動させ、小指から順に顔近づけ、視覚と嗅覚を満足させる。この二つの感覚器官からなる欲求は満たされるとそれで終わりでなく、さらに強い欲求をもたらし新たな、そして肉感的、官能的な行動を起させる。触覚と味覚による欲求の充足である。


続く