この手であの日常を終わらせられるなら

続き


気がつくとテルオは真っ赤な部屋の中にいた。壁も床も天井も全てが赤い。
「なんだというのだこの部屋は」
テルオはあせっていた。
「なんなんださっきから、俺は一体・・・」
(分からないことだらけだ。何だってんだ今日は。俺が何をしたんだ。何が原因なんだ・・・)
あらゆる考えが頭の中をよぎる。この結果は一体何がもたらしたのか。まずこの状態は常識的なものではない。普通に考えても無駄なのだ。大体前例がない。この状況は彼が経験・見識・予想・妄想ですら遥かに超えた事態にしか思えなかった。よって比較しようのない全くの未知の状況であることを理解した。
常人ならこの時点で絶望し、考えることを放棄するだろう。あるいは思考の迷路に埋まり鋭敏になりすぎた感覚のため精神を疲弊し発狂する者さえいるとしてもおかしくはない。テルオもまた同じだった。この状況を合理的に判断し、解決策をとることと、この状況を受け入れることこの二つの命題を与えられた彼の思考能力が限界を迎えることは時間の問題に見えた。がテルオはこの部屋において唯一赤くないものに気付き悲鳴を上げた。
赤い部屋においてその存在は明らかに異常であった。赤い部屋の中それは唯一重々しくも浮くような青色だったのである。そしてそれは彼の全身であった。


続く