僕と横綱の夏休み

朝青龍が謹慎を喰らった。自宅と稽古場と病院しか行けないというので、気が滅入るだろうと思っていたら、横綱から電話。
マリオカートでもやらない?」
どことなく頼りない彼の声を聞いて、マイコントローラーを持って彼の自宅へ。
「謹慎喰らっちゃたよ〜(T0T)/」
「夏休みだと思えばいいじゃんかo(^_^)oそれよりこの前の決着つけようぜ!」
慰めよりも気晴らしのほうがいい。二人で夢中でゲームに没頭した。
2時間ほどたってからだろうか、
「復帰、できるかなぁ(@_@)」
「・・・」
正直、その質問には答えることが出来なかった。気まずい沈黙がその場を支配する。正直、今回彼がしたことは弁明のしようがない。一相撲ファンとしての彼の行動は許せない。が、私には相撲ファンであることよりも朝青龍ファンであることの方がどうやら大きいらしい。外国から来たこのガタイのやたらいい青年は、私と同い年にして角界の頂点まで最速で駆け上がり、そして平成の大横綱として何年も戦い続けてきたのだ。私がぶれたりやさぐれたりしている間、彼が相撲道に身を置くことで、なめざるを得なかった辛酸は、彼に絶大なカリスマとタレントを与えたのだ。そして、この深い苦悩も・・・そこでこの謹慎処分が下された時に考え付いたアイディアを彼に進言してみることにした。大抵の人間ならこのアイディアを一笑に付すだろうし、ひょっとしたら激昂してなぐりかかって来るかもしれない。
「俺一つ考えたんだ。来場所も相撲取れる方法。」
「えっ(*o*)」
「この覆面を被ってくれm(-_-)m」
「えぇぇっっっ(///0///)」
「この狼の覆面を被って、"謎の覆面力士ウルフマン"としてたたかうんだっ!そして優勝してこの覆面をみなの前で脱ぎ捨てるんだよっ!!」
少し熱っぽく語りすぎたようだ。彼の表情には戸惑いしか見えない。(やはり、失敗したか・・・)私がそう結論付けようとしたとき、彼がその大きな両手で私の肩を掴んだ。(っっ殺されるっっっ)しかし彼の目を見てそうでないことが分かった。彼の目は精気を取り戻しキラキラと正に輝いていた。

これが来場所を騒がすことになるウルフマンの誕生秘話である。